占い師だって結構大変なのです

同じようにお伝えしたとしても、相手のキャラクターによって、受け取り方は人の数だけさまざまです。怒る人、悲しみに暮れてしまう人、そこから奮い立つ人・・・。

はっきりと伝えることだけが、ベストとは限らない、という前提で臨まなければなりません。

そしてどんな伝え方がその方の心により響いていくのかは、いつもライブ感覚で察していくしか、ないのです。ここでは伝え方の難しさ、そして占う側の心の折り合いのつけ方とともに、隠れた苦労についてお伝えします。

・悩める占い師たち
・未知の世界の人々
・常識人間はダメ!?
・エコノミークラス症候群
・男子禁制!!
・占い師を目指す人

【悩める占い師たち】

占い師が苦労することの一つは、鑑定結果の伝え方です。実際、占い師さんからの
相談で最も多いのがこの課題です。これは医者が病名を患者に告知する状況に似て
います。いかなる結果も正確に、なおかつ不安を与えないようにお伝えしなければなりません。このさじ加減が占者の腕の見せ所でもあり、かたや悩みの種でもあるのです。

悪い結果が出た場合、伝える側である占い師も心が痛みます。その蓄積で、日々いたたまれない気持ちで仕事をすることに、疲れてしまう占い師も少なくありません。良く「毎日人の悩みを聞いて疲れませんか?」と聞かれます。自分におきた問題でなくても、人の悩みを一緒に背負う、ある種の疑似体験をすることになるからです。

実際には日々経験を重ねていく中で、そういう疲れには少しずつ慣れてきます。ただ、占い師を辞めてしまう人達は、伝えることの心痛と、心の葛藤に耐えられないのでしょう。

占い師の言葉ひとつに、涙を流す人、怒りをぶちまける人、気を落とす人、恨む人…たとえ何千人鑑定したとても、こうした反応にまったく何も感じなくなることはありません。

街占を始めて間もない頃、鑑定を終えた私に「早く忘れないと身が持たないよ」と先輩占い師さんが励ましてくれました。鬱々とした気持ちのご相談者とお話しする時は、より一層のエネルギーを使います。この辛さから逃げることなく頑張れば、彼女のように強くなれるんだ、と心底憧れました。

ある日、特別救助隊のドキュメンタリー番組を見ていた時、その中に出てきた教えがヒントとなり、とても勉強になりました。「(要救助者の居場所)そこまで降りちゃダメ!同じ場所に立っちゃダメだよ。助ける時は上から引き上げる!忘れないで」この教官の”助ける時は上から引き上げる”という言葉にハッとさせられました。実はご相談者と同じ気持ちになることは、何の助けにもならないのだと。それからは“占者は一段高いテンションで、相手の気持ちを引き上げないといけないのだ”と、沈んで行きそうな自分の心に言い聞かせています。

日々の出来事からヒントを得て、熟考を繰り返した今、弱い部分は変わらず存在しているのですが、そんな部分を含めた自分の気持ちの扱い方がようやく、分かりかけてきた気がします。

【未知の世界の人々】

占い師にとっても当然、未知の世界はたくさんあります。政財界の実情、医療の現場、風俗の世界、戦場の生活、僧侶の日常、ヤクザの実態、元受刑者の人生etc…。想像だけでは計り知れない世界に生きる人達とお話しするとき、未経験という壁は付け焼刃の勉強では、とうてい乗り越えられません。実際にお叱りを受けたケースも何度かありました。

しかし、これは身近な人であっても同じことが言えます。世代の違い、性別の違い、お国の違いなど、他人と自分は違う所だらけです。決して越えられない隔たりに、どう向き合うのか考え続けることは大事なことだと思います。

それと同じように、目の前の相談者様と私だって、物の見方も考え方も、環境もライフスタイルも全てが違うのです。たとえ何もかもが違ったとしても、人と人との距離を縮めることができる鍵とは何なのか。それは、相手の価値観やその人の世界をいったん受け止めることが第一歩ではないでしょうか。真摯に向き合うことで、そこにお互いの”信頼”が生まれてくるのではないかと感じています。

初対面の私が一瞬で信頼関係を築くことは不可能かもしれませんが、せめて“信頼できそう”と感じてもらえる占者でありたいと思います。人は、人の言葉や態度など見聞きできるもの以外からも、たくさんの何かを感じ取っていると思います。その人の心の在り方は無意識のうちに仕事にも反映され、知らぬ間に人の心に働きかけるのではないでしょうか。常に、どういう心持ちで行動するのか意識していることが、良い仕事、さらには自分が働きやすい環境づくりにも繋がるのではないかと思います。これは、占い師に限らずどのような仕事でも同じことが言えると思うのです。

【常識人間はダメ!?】

ご相談の中には一般的に考えれば理解に苦しむ内容もあります。それを占者の一方的な価値観によって、“非常識”という乱暴な枠組みで一蹴するのはどうかと思います。相談者様は誰にも打ち明けられないからこそ、依頼して下さったのです。

世の中におこる問題は、一般論で解決できるような単純なものばかりではありません。“常識・非常識”というのは、良く聞いてみると、個人的見解が多分に含まれていることが多いのです。また、育った国や家庭環境、生まれた時代によってもタブーは違ってくることでしょう。時に、尺度のあいまいな“ものさし”だと思える時があります。

人の世は複雑怪奇。できるだけ多角的に、かつ慎重に検証していかないと、思い込みによって問題解決の可能性を見逃してしまうこともあるのです。発想の転換を促すこともまた大切なアクションです。悩みが悩みでなくなる視点が、必ずどこかにあるハズなのですから。

【エコノミークラス症候群】

1日10時間座り続けたことはありますか?立ち仕事は大変、というイメージがありますが、座り仕事もなかなか大変です。占い館に勤務すれば、当然仕事中はデスクワーク以上に“座りっぱなし”です。午前11時から午後9時まで、椅子から離れることができるのは昼休みとトイレ休憩の約1時間だけです。

長時間同じ姿勢で座り続けることで発生する疾患エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)をご存じの方も多いでしょう。占い館所属の占い師達は、毎日その危険にさらされていると言っても過言ではありません。また、年齢に関係なく、座り続けることが原因で腰痛持ちになってしまうケースも多いのです。

さらに、一番辛いのは夏場です。空調の利いた室内のどこが辛いの?と思われるかもしれませんが、商業施設の空調は、店内を歩き回るお客様の体感温度を基準に設定されています。一日中座っている私達には、常にクーラーが効きすぎる状態となり、まるで冷蔵庫に長時間入っているかのようです。これが本当に堪えるのです。

上着を羽織ったり、膝かけを掛けたり、靴下の重ね履き、さらに真冬用のモコモコスリッパを履いてみたりとさまざまな冷房対策をしていても、底冷えする寒さに手足の感覚が無くなってしまうこともしょっちゅうです。あまりに辛くて、時々体をほぐす為に店舗周辺を数分歩くこともありますが、頻繁にそういった行為をとったことが仇となり「離席が多い」「トイレ休憩が長い」と占い館から注意を受けてしまった占い師さんもいました。実はその時私達には知らされていなかったのですが、向かいの店舗の受付けの方が、占い師達の離席時間をチェックして占い館に知らせていたのです。運動量の少なすぎる仕事というのも、想像以上に体力的にキツイ仕事なのです。

【男子禁制!!】

男子禁制という占い館がありますが、これはお客様のために設けた規定ではありません。不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、女性占い師にとっては非常に安心できる職場環境だと思います。

占い師の仕事場は各自のブースの中。この半個室という死角の中で、様々なトラブルが起こるようです。占いの利用者は若い女性ばかりだと考えるのは間違いです。実際私のお客様も、常に4割近くは男性なのです。同僚の女性占い師の中には、男性に襲われて怪我をしてしまった方もいらっしゃいました。しかし、それ以上に怖いのは、殺意を抱かれるような深い恨みをかってしまうことです。実際にそのような現場に遭遇し、恐怖に凍りついたことがあります。

「○○って占い師どこ?」と怒鳴り込んで来た中年男性が、「あの女、首絞めてやる!俺の人生メチャクチャにして!」と全てのブースを覗き込んで、その占い師さんを探し回っているのです。幸いその方はお休みだったので、大惨事は免れましたが、一瞬その場の空気が張り詰めたのを今でも思い出します。

私は運が良いことにこういった大きな被害に遭ったことはありません。ですが、お仕事で経験を積み重ねていくたびに、人はいつも心に爆弾を抱えているのだなぁと、つくづく思うのです。昔、有名な占い師さんが言っていたそうです。「悩みを占う前に、まずその人に殺されないか占いなさい」と。そのぐらい占えるレベルになってからプロになりなさい!という警告の意味も含め、そうおっしゃっていたのだそうです。人の人生に関わり、時に感情をぶつけられることもあるこの仕事は、危険を孕んでいることも想定しなければいけません。

【占い師を目指す人】

人の相談に乗ることが好きな人、独学で占いを学んだ人などが、時々私の元へ来て占い師になりたいとおっしゃいます。そう言って頂くと、占い師という仕事に魅力を感じていただいていることがうれしいですし、とてもやり甲斐のある仕事ですから、ぜひ頑張って頂きたいと思います。ただ「人の役に立ちたい」「感謝される仕事がしたい」と期待を込めておっしゃる方には、その期待が裏切られる、お薦めできない仕事かもしれません。なぜなら、お礼を言われるどころか、心無いことを言われることも数多くあるからです。

占い師の元へ相談にいらっしゃる方々は、どんなことを言われるのだろう、と占いを楽しむ余裕がある人ばかりではありません。極度なストレスを抱えている人、苛立ちを抑えられない人、気持ちが塞いでいる人、ショック状態の人、生気を無くした人、緊張感で張り詰めている人、悲しみから立ち直れない人、鬱状態の人、猜疑心の強い人、心が荒んだ人…。そんな方と一対一で対峙する仕事なのです。

温かい言葉が返って来ないことなどは日常茶飯事です。掛ける言葉を一歩間違えれば、感謝されるどころか、必要以上に非難されることすらあります。テレビや雑誌に見る、お悩みをズバリ解決して最後は笑顔で終わるような、そんな清々しい仕事ばかりではありません。

こういった説明をすると、占い師は相談に乗っても感謝すらされない、報われない仕事だと感じてしまうかもしれません。けれど、決してそんなことはありません。なぜなら、占い師の仕事を通じて得られる最高の充実感は、必ずしも相手から受け取る“謝意”だけではありません。自分以外の誰かの人生に、一瞬でも深く関われることこそが、この仕事の醍醐味であり、最も素晴らしい点の1つだと思います。

「事実は小説より奇なり」という格言どおり、人生とは神秘的で、劇的で、驚きに満ちていて、感動的です。それを日々、肌で感じることができる仕事なのです。これほど貴重な経験を得られる仕事は他にないと思います。今占い師を目指している皆さんが、将来この仕事の素晴らしさを味わう仲間となることを、心から願っています。